ファイナンスの基礎-割引現在価値

ファイナンスの重要なコンセプトに割引現在価値というものがあります。たとえば、次のことを考えてみましょう。現在あなたの手元にある100万円と1年後の100万円は同じ価値をもっているでしょうか?直感的に同じ価値ではないと感じると思います。現在手もとにある100万円はすぐにそして確実に使えますが、将来の100万円は現在すぐにそして確実に使うことはできません。つまり将来の不確実な100万円よりも現在の確実な100万円のほうが価値は高いはずなのです。

それでは、将来の100万円が現在どれくらいの価値をもっているかをどのように計算したらいいでしょうか?次の事例を通して検討しましょう。
今、1年満期・金利1%の無リスク債券に100万円を投資したと考えましょう。あなたは1年後に101万円をえられるはずです。

次に、リスクのあるエマージングマーケットの1年満期・金利10%の債券に投資したとしましょう。あなたは不確実ではありますが1年後に110万円をえられるはずです。

上の2つの事例から何が分かるでしょうか?リスクの高い債券のほうが見返りとしてのリターンである金利が高いことが分かります。そして、最初の例では市場は現在の100万円と将来の101万円が等価であるような金利を提示しているということがいえます。それはつまり、将来の101万円を1%で割り戻せば100万円になるということであり、この過程を経て算出された100万円のことを将来の101万円の現在割引価値と呼びます。そして、ここで割戻しに利用した1%のことを割引率とかディスカウントファクターと呼んでいます。

同様のことはもちろん不確実なエマージングマーケットへの投資にもいえます。

ここで重要なことは、不確実性の高い投資ほど割引率が高いということです。リスクの高いキャッシュフローほど高い割引率で割り戻さなければいけないということです。ですから、不確実性の高い投資を行った際の将来想定されるキャッシュフローを無リスク金利で割り戻してしまったら、割引現在価値を過大評価してしまうことになり、投資判断を誤らせてしまうことでしょう。投資の際は、不確実性の高さにフィットした割引率を設定することがとても重要なのです。

参考文献
リチャード・ブリリー、スチュワート・マイヤーズ他「コーポレートファイナンス 第8版」日経BP社(2007)